めがね橋四方山(よもやま)

 以下は全て,本会の「掲示板」に会員の皆様が投稿された情報です。ここでは主に石造めがね橋関連のやさしい技術情報を発信していきたいと思います。みな様のご協力をお願いします。メールの宛先はこちらです。


 
 
◆<平山橋の輪石 >  投稿者:森川様とOGAMI様(2021年 2月2~8日)

 コロナ禍で、人と接しない石橋巡りをしては、Facebookに写真を投稿したりと、地道な活動をやっております。つい最近、熊本県山鹿市にある「平山橋の輪石」を見に行きました。で、いつものようにFacebookに昨日、投稿したところ、メンバーの方から次のようなコメントがありました。

復元竣工が2015年頃、5,6年経っている。頂部の輪石の下端が開いている。竣工時は輪石全面密接していたのでは、、、原因は橋の基礎が開いているのでは、、、大地震時にどうなるか? この石橋の下部に柵を設けて人を入れない方が良いのでは?
私も行った時、要石の落ち込みと拱頂部要石とその周辺の輪石の開きが気になっていました。要石は、贄田様のページを見たところ、元の位置に在った時点も落ち込んでおり、築造当時からそうだったかも知れません。ただ、輪石の開きは気になるところです。
撤去後仮置きし、石工養成講座で移築、復元したと知りましたが、どなたか工事に携わった方、その辺の状況が分かる方、いらっしゃいませんか?
 


施工責任者です^^ (OGAMI) 森川様の疑問にお答えします。

平山橋の完成式典の会場で、
「現在は仮の姿であり、可能な限り早期に壁石で補強した、実用的な石橋として移転復元されることを、お願いせざるを得ません。」
と挨拶しております。
で、その理由を文字で表そうと思いましたが、少々ややこしくなるので、説明用の略図を作ってみましたので、添付します。

図中の赤がアーチに影響する応力です。位置と大きさを表しています。結果、「アーチ石橋は壁石で補強されなければ不安定」だと言えます。

したがって赤い矢印の応力が少しでも残っていれば、どこかに歪みが隙間となって現れます。アーチ全体を壁石で抑え込み、応力がゼロになった時にしか隙間は無くなりません。
往時の平山橋は壁石が完備され、道路橋として現役でした。現在の姿では抑え込む壁石が無いために、ストリップ状態部分のアーチ輪石に応力が発生しており、不安定な状態なのです。
答えになりましたでしょうか?

霊台橋の拱矢比は2.0で間違いありません。通潤橋のアーチは、補強鞘石垣で隠れていますが、霊台橋と同じく、拱矢比は2.0だと考えられます。通潤橋仕法書と南手新井手記録の関係から、通潤橋のアーチは、霊台橋の図面を使用したと思われます。

両岸でアーチの起拱石の位置(高さ)が違う場合は、低いほうの起拱石の下端から要石の下端までの垂直距離を拱矢とするのが、妥当だと考えられます。

>また、不安定な状態なのに立ち入り防止柵等の処置はしないでいいのか?
>疑問が残りますが・・・。
震度4以上の地震があれば危険だと考えられます。発生後瞬時には崩落しないので、数秒の間に逃げ出す行動を取るように促すための、
***************************************************
 強い地震があった場合、すぐに石橋から離れて下さい
  (アーチがくずれ、落下する危険があります)
***************************************************
または
**************************************************
    アーチの下に、入らないでください
   (強い地震があった時は、くずれます)
**************************************************
というアーチの両側から見える注意看板があれば良いとは思います。(子供にもわかるように、というのが難しいのかもしれませんが)

>もし、何かしら施したほうが良いのであれば、山鹿市に
>掛け合いたいと思います。
山鹿市や設計者のご意向も聴かなければ判断できませんが、本来、施工者が設置すべき看板だったかもしれません。費用負担が必要であれば準備します。お手数おかけします。m..m

アーチの上を、ダボ石でつないだ縁石で用心のため補強しているつもりですが、接着剤を使っていない空積(組)なので、不安は残ります。 ただし、震度7だったとしても瞬時には崩れません。変形しながら輪石の隙間が広がりながら、数秒後に崩落するという挙動が石橋の特徴です。

 
◆<拱矢(きょうし)と拱矢比について> 投稿者:森川様とOGAMI様(2020年12月24日)

拱矢(きょうし)と拱矢比(きょうしひ)について 投稿者:豊岡のめがね橋を守る会 森川 投稿日:2020年12月24日(木)22時54分52秒 返信・引用
この題名で、FacebookにUPしましたが、間違いや表現がおかしい所があれば、ご指摘ください。

これまで眼鏡橋の投稿で、”拱矢:〇〇m”と言った諸元をこれまで記載していましたが、今日はその説明です。「拱」を辞典で知らべると、
拱とは・・・こまぬく/こまねく/両手を胸元で重ね合わせる/何もしないで、ただ見ているさまなどの意味をもつ漢字
これだけでは眼鏡橋とは関係ないようですが、
「拱橋(きょうきょう)」とは、
両手を胸の前で組み合わせて敬礼する中国の礼儀作法で、その形がアーチに似ているところから、中国ではアーチ橋のことを拱橋と言い、日本でも使われています。
「拱手(きょうしゅ)」とは、
カンフー映画などで戦う前、右手で作った拳の上に左手を包み込むようにして添えるポーズをしているシーンが見られます。
(ジャッキーチェンも良くやっています。「燃えよドラゴン」でブルース・リーもでやっていたような?)このポーズは、相手に対する敬意や謝意をあらわす挨拶とされます。男性は左手で右手の拳を包み、女性は右手で左の拳を包むのが正規です。(他にも深い意味があるようです。)ちなみに、凶事の挨拶の場合は、左右を逆にするのが礼儀だそうです。新型コロナウイルスの蔓延が深刻な中、台湾では握手の代わりとなる「拱手」が拡散されているそうです。(かっこいいので日本でも流行りそうですが・・・。)
そして、「拱」を英訳すると、”arch”(アーチ)なんですね!

本題に入ります。
「拱矢(きょうし)」とは、
両岸の基礎(橋台)を結んだ線より、要石(輪石の最頂部:アーチ中央部)の下側までの距離になります。
アーチ状の弧(弓)に弦に矢をつがえたような形(距離)になります。

「拱矢比(きょうしひ)」とは、
径間(スパン)を拱矢(ライズ)で割った値。アーチが完全な半円なら拱矢比は"2.0"になります。
径間10.0m、拱矢5.0mの場合
10.0÷5.0="2.0"が拱矢比になります。
すなわち、半径5.0mの半円と言う事です。
その半円の眼鏡橋が、熊本県下益城郡美里町に「霊台橋」が在ります。霊台橋の拱矢比は、径間28.24m÷拱矢13.98≒"2.0"で半円のアーチ橋です。本当に半円なのか、実証してみました。
霊台橋のアーチの中に巨大分度器(半円)を入れてみました。注)こんなにでかい分度器はありません。写真がオルソ画像※ではないので、まず、上手くいかないだろうと思っていましたが、ナント!若干のズレはありましたが、アーチの中に巨大分度器がすっぽり入りました!「霊台橋」は間違いなく、半円のアーチ橋でした。しかし、大型機械も無い時代、人の力だけで見事な半円の拱橋(きょうきょう)を、わずか6~7か月の工事期間でよくぞ、架けたものです。
霊台橋(れいだいきょう):熊本県下益城郡美里町を流れる緑川に架かる江戸時代末期の石橋(国指定重要文化財)2020/04/19投稿
https://www.facebook.com/groups/612082879604659/permalink/676835919796021/
※オルソ画像
真正面から見た画像を変換(実寸法(実縮尺)と同じにする。)した、歪みを補正した画像のことです。
 
 
霊台橋の拱矢比は2.0で間違いありません。通潤橋のアーチは、補強鞘石垣で隠れていますが、霊台橋と同じく、拱矢比は2.0だと考えられます。通潤橋仕法書と南手新井手記録の関係から、通潤橋のアーチは、霊台橋の図面を使用したと思われます。

両岸でアーチの起拱石の位置(高さ)が違う場合は、低いほうの起拱石の下端から要石の下端までの垂直距離を拱矢とするのが、妥当だと考えられます。
 

最終更新:2021/03/02
石橋ライブラリ   ホームページ