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概要

20150218-0005-001

第 1期 2011(平成 23)年度 9*5 第1期の講座カリキュラムの予定は10回を予定していた。*6 溶結凝灰岩とは、火山の噴火の際の非常に多量の火砕流が急速に冷え、地層に堆積してできた岩石。*7 セリ矢とは、石材を割るための石工道具の一つ。*8 ゲンノウ(玄翁)とは、ノミやセリ矢などを叩くハンマーのこと。採石場で石割り実習〈2011(平成23)年9月25日 上塚尚孝委員長のレポート〉 肥後種山石工技術継承講座は、9月24日でカリキュラムの半分*5を消化しました。この時点で私が感じたことを述べておきます。 第4回と5回目の講座は、上益城郡山都町の西部、同郡御船町との境に位置する有限会社矢部石材工業の採石場で実施されました。周辺は山に囲まれ、家は一軒も見えません。はるかかなたに雲仙が見えることで、そちらが西であることが分かります。受講者6人はここで師匠の竹部光春さんの心と技を継承しようと精一杯の頑張りを見せています。 採石場が提供してくれる石材は、一人で押しても転びそうにないほどの大きさの溶結凝灰岩*6です。これを前にして石割り実習がスタートしました。まず師匠が、石の目に沿ってチョークで線を引き、セリ矢*7を入れる位置に長方形の印を付けます。受講者はそのチョークの位置に矢穴を掘る作業に掛かります。受講者は第4回目よりもノミの使い方が上達したようで、第5回目の今回は、細い穴が掘れるようになっています。 掘った鉄製の矢穴にセリ矢を入れてゲンノウ(玄翁)*8で叩たたくのですが、石は簡単に割れるものではありません。たたいた拍子にセリ矢の鉄片が割れて飛んでいくことがあります。そのときは穴の底にたまった石の粉のさらえ(掃除)をしたり、穴をもっと深く掘るように、師匠は教えます。強い力で叩きさえすれば割れるものではないということが、見ていた私でも分かりました。 受講者はいくつかの矢穴に差し込まれたセリ矢を順番に叩きながら、石が割れるのを心待ちにしているようでした。どうしても割れないと、師匠が替わってゲンノウ(玄翁)を振り上げてはセリ矢を叩きます。すると、チョークの線に沿ってひびが入ります。そして見ていた私も、思わず緊張していたことに気付き、ほっとします。左右に割れた大きな石の内側の面は、この世の日の目を初めて見たわけです。私は童話の「桃から生まれた桃太郎」を連想し感激しました。 石材店の後継者である受講者の一人に、「石を割るのは?」と聞くと、「初めてです。いつもは電気のこで切っていますから」と、うれしさいっぱいの答えが返ってきます。6人の受講者中5人が、セリ矢を使った石割は初体験だそうです。これは意外でした。文化財を手掛けた師匠が指導〈9月25日 同レポート〉 二つに割れた石材を竹部さんが見つめます。そして、間けんちいし知石として石垣に組んだとき、面つら(表)になる側に丸印を書き込み、続いて後方の控えとなる石材の余分な部分は削り取る必要があるので、そこへチョー