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概要

20150218-0005-001

62 第3 章 日本の石橋の現状*3 太?(だぼ)とは、石材や木材などの接合部にずれを防ぐために埋め込む棒などのこと。では、大正期に錬積工法で築造された福岡県八女市の寄口橋、大瀬橋、宮ケ原橋、大分県中津市の耶馬溪橋、馬溪橋は流失することなく激流に耐えた。 近年の石橋被害を見ると、これまで100年以上も洪水に耐えてきた石橋がいくつも流失し、大きな被害を受けている。集中豪雨は自然現象であるため、100年単位の周期的変化である可能性も考えられるが、手入れされない人工林の増加や山の保水力の低下など、人間の活動が自然に影響を与えているのかもしれない。 今後、貴重な石橋が自然災害により損傷を受ける可能性が低くなることは考えにくい。自然災害により石橋が損傷した際、適切な修理ができる石工技能者の養成の必要性はますます高まっているのである。石橋保存の壁 貴重な石橋が豪雨により、流失や損傷の被害を被る一方、丈夫な石橋があるために橋の両岸が氾はんらん濫し、住宅等の浸水被害が拡大したとして、石橋の撤去を自治体に訴えるケースもある。先に2012年九州北部豪雨の際に浸水被害を受けた馬溪橋周辺住民の例を紹介したが、その先駆的な事例が、長崎県諫早市を流れる本明川に架かっていた諫早眼鏡橋の移設復元である。諫早眼鏡橋の移設復元の事例 気象庁がインターネットサイトで公開している「災害をもたらした気象事例(昭和20?63年)」には、昭和32(1957)年の欄に「諫早豪雨」「7月25日?7月28日」「日降水量1000㍉を超える局地豪雨」とある。諫早豪雨の概要は次の通りである。 長崎、熊本、佐賀県で大雨となり、長崎県瑞穂町西郷(農林省の観測所)では24時間降水量が1,109㍉の記録的な豪雨となった。長崎県諫早市では、市内を流れる本明川が2度にわたり氾濫、2回目のはん濫では上流で発生した大規模な土石流による大量の土砂と流木が市内を襲い、諫早市だけで500人を超える死者が出た。 諫早豪雨の被害は、死者586人、行方不明者136人、負傷者3,860人、住宅全壊1,564棟、半壊2,802棟、床上浸水24,046棟、床下浸水48,519棟など(消防白書より)。本明川に架かる石造の2連アーチ橋「諫早眼鏡橋」は、高欄や壁石の一部が流失したものの、輪石が鉄製の太だぼ?*3でつながれた同橋は堅固で、流れてきた流木や流失した家屋のがれきなどをせき止めた。しかしそのために、両岸に浸水被害が発生した。