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概要

20150218-0005-001

石橋保存の壁 67◇ファサード保存 これまで見てきた路面拡幅の方式以外に、石橋のイメージ保持を前提とした拡幅工法として、ファサード保存(外観保存)と呼ばれる土木工法もある。ファサードとは正面外観を意味する言葉で、この工法では、石橋を川の流れに対し垂直方向に二分し、両壁面を上流ないし下流側に移し、路面の拡幅が行われる。*6 2010年3月に竣工した北海道札幌市中央区の「創成橋」が、この工法による石橋保存で日本では貴重な事例となった。そばには北海道の道路起点(北海道里程元標)があり、同橋は北海道開拓の歴史を物語る土木遺産でもある。 創成橋は1910(明治43)年に築造され、1973(昭和48)年まで路面電車の供用に耐えた。78(昭和53)年に高欄などの改修工事が行われているが、大規模な本体工事は初めてとなるため2005年から、有限会社真壁石材などの工事関係者が、九州各地で石橋の移築工事技術を研修した。日本の石橋を守る会もその活動を情報面で支援し、09(平成21)年11月に着工した工事は10年3月に竣工した。*7 解体保存工事は、快適で魅力ある都心空間創出のため、札幌市が行った「創成川通アンダーパス事業」の一環だった。橋の両岸には地下自動車道が設けられ、都心の交通混雑緩和と上部空間の公園化が図られた。石材の状態で復元を待つ石橋 河川改修や道路拡幅などにより、古い石橋の現地保存ができない場合、撤去が行われてきたことは何度も紹介したが、石橋の文化的価値が認められ、移設を目指す検討がなされる場合がある。 2012年度(第2期)種山石工技術継承講座で受講者たちが復元作業に参加した熊本県宇城市の須ノ前橋*8は、2003(平成15)年に解体され石材として保管されていた石橋の復元が実現した例である。同橋が架かる宇城市の松合地区では1999(平成11)年の台風により高潮災害が発生し、その後の復興事業の一環で石橋を解体したが、街並み環境整備事業として保管していた石材で須ノ前橋が復元されること創成橋北海道札幌市中央区、1910(明治43)年架橋、単一アーチ、橋長7.33㍍、橋幅13.25㍍、径間6.38㍍。ファサード保存により拡築*6 スラブ上載方式、バイパス方式、ファサード保存などによる道路拡幅方法に関する内容は、「風景の中の石橋」小林一郎著、槇書房、1998(平成10)年発行、ならびに、「東京の橋」伊東孝著、鹿島出版会、1986(昭和61)年発行を参照。*7 創成橋に関しては、公益社団法人土木学会の情報サイトより「平成22年度の選奨土木遺産」の解説を参照。同橋は日本橋架橋の1年前に完成している。*8 須ノ前橋の復元工事についてはp22?26で紹介。