ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

20150218-0005-001

72 第4 章 石橋の復活を目指して第4章石橋の復活を目指して石橋構築・修復技術者養成事業への期待熊本大学大学院自然科学研究科 教授 山尾 敏孝石橋は先人たちが築いた貴重な土木遺産 国内の石橋の約9割が九州・沖縄に現存するといわれ、地域の象徴として保存・活用された石橋も多く、自然と調和した景観は人々に癒やしと安らぎを与えてくれる貴重な文化財となっている。これは、石橋が木橋と違って腐らず、かつ石材を使用することから耐久性があり、ヨーロッパなどにおいて永久橋として2000年以上も前から建設されてきた歴史が証明している。日本でも、長崎の中島川に17世紀半ば頃架設された石橋が最初といわれているが、石橋架設の技術の伝承と使用する石材で、適度な強度と加工しやすさを有する凝ぎょうかいがん灰岩が、九州全土に広く分布していることも石橋の多さの要因となっている。 凝灰岩は、27万年前の阿蘇山の噴火である第1期(Aso-1)から9万年前の最後の大爆発を起こした第4期(Aso-4)までの火砕流が堆積してできた阿蘇溶結凝灰岩が多いようである。この他にも花崗岩、火山岩や砂岩など多くの石材を産出しており、石橋のアーチ輪石や壁石として用いられている。一度架設するとほとんど維持管理の手間がかからず、種々の交通荷重にも十分耐えられ、洪水等による損壊や流失以外はほぼ問題がない永久橋として、道路橋のみならず水路橋や歩道橋としても使用されてきた。特に、江戸時代末期から明治・大正・昭和期にかけて、多くの石橋が九州各地で建設された。 このような素晴らしい石橋構築の技術があったにもかかわらず、その技術は秘伝扱いであり、一般の技術者はほとんど知り得ないことであった。一方、コンクリート橋や鋼橋の材料開発と架橋技術の発展は、従来の石橋構築技術がなくても橋の架設を可能とし、長大化を進展させた。また、石橋のみならず堤防などの護岸や石垣などの塀等も大量生産ができる安価なコンクリートが使用されるようになった。 いまや貴重な土木遺産となった石橋を維持管理することは必要なことである。石材の採掘、切り出し技術による石材確保と最新の架設・施工技術をもってすれば、石橋の架設も十分可能であり、石積みの特徴は十分発揮できると思われる。さらに、石橋の持つ利点である耐荷力や耐久性を明らかにすることが重要であると考える。石橋の活用を図る新たな取り組みについては後に述べる。解体復元調査委員会の委員として西田橋に関わる 鹿児島市を流れる甲こうつきがわ突川にかつて架かっていた石橋群(五石橋)は、上流から玉江橋、新上橋、西田橋、高麗橋、武之橋の順で、5連の武之橋以外はすべて4連の石造アーチ橋である。江戸時代末期に鹿児島藩第8代藩主島津重しげひで豪が肥後国の石工・岩永三さんごろう五郎を招いて造った石橋で、以来現役の橋として利用