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概要

20150218-0005-001

8 第1 章 肥後種山石工技術継承講座 経過報告梁りょう、宇助、宇市の足跡と業績について、これまでの研究成果を披露した。 地質調査等を専門に行う株式会社アバンス(熊本市東区)の技術部チーフで、博士(学術)、技術士の岩内明子氏は「石材の種類と性質」と題し、熊本県内の石材の分布状況と各地の石材の性質、中でも阿蘇溶結凝灰岩について詳しく解説。 株式会社建設プロジェクトセンター(菊池郡大津町)代表取締役で技術士の中村秀樹氏は、「損傷を受けた石橋」と題し、石橋点検の要領と点検実施事例、損傷度の判定基準、修復のガイドラインについて説明した。 熊本大学大学院自然科学研究科教授の山尾敏孝氏は、「眼鏡橋の過去・現在・未来?」と題し、石材やアーチの強度実験等によるさまざまな研究内容、中国で近年築造された巨大石造アーチ橋を紹介し、新たな石橋の築造に対する展望を語った。 技術士の軸丸英顕氏は、「石橋のかたちと構造」と題し、石造アーチ橋の構造と材料、形状と強度の関係などについて分かりやすく説明。 日本考古学協会会員の中村幸史郎氏は、「和わさん算による円弧の算出」「規きくじゅつ矩術による円弧の算出」と題し、西洋数学とは別に江戸時代の日本で独自に発達した計算方法「和算」と、大工職人が使用する曲かねじゃく尺=指さし金がねを使った輪石の設計法「規矩術」について、研究成果を披露した。 株式会社尾上建設(上益城郡山都町)代表取締役の尾上一哉氏は、1854(嘉永7)年に築造された、当時国内最大の石造水路橋「通潤橋」(山都町)*1の設計に関する記録「平成新訳『通潤橋仕法書』」を分かりやすく解説し、「石橋および支保工の設計」と題し、実習で架ける石造アーチ橋と輪石組み立てを支える支保工の設計内容について説明した。 実技指導を担当する肥後種山石工技術継承者の竹部光春氏は、かつて石工棟梁を務めた、下益城郡美里町の霊台橋保存修理工事*2と鹿児島市の西田橋移設復元工事*3を画像で振り返り、工事内容を解説。さらに、国土交通省河川局発行の「石積み構造物の整備に関する資料」をテキストとして、間けんちいし知石*4の規格、石材の積み方や胴込めの仕方、石材の性質と風化などについて、竹部光春氏と上塚尚孝氏が「石材とその積み方」と題し講義を進めた。 見学や実習の様子については、上塚尚孝委員長のレポートを紹介する。*1 通潤橋は、熊本県上益城郡山都町にある単一アーチ水路橋。架橋1854(嘉永7)年、橋長75.6㍍、橋幅6.3㍍、水面からの高さ20.2㍍、径間27.5㍍。江戸時代に築造された石造水路橋としては最大。国指定重要文化財。尾上建設は通潤橋に設けられた石造通水管の修理工事などを手掛けている。*2 霊台橋は、同県下益城郡美里町にある単一アーチ橋。架橋1847(弘化4)年、橋長89.9㍍、橋幅5.45㍍、水面からの高さ16.03㍍、径間28.24㍍。江戸期に築造された石造橋としては最大径間。国指定重要文化財。1978?80年に大規模な保存修理工事が行われた。*3 西田橋は鹿児島市の石橋記念公園内の4連アーチ橋。架橋1846(弘化3)年、橋長49.5㍍、橋幅6.2㍍。鹿児島県指定文化財。同市の甲突川に架かっていたが、1995?1999年に調査・解体・移設・復元工事が行われた。*4 間知石とは、石垣や土留めを積むときなどに使われる標準的な形をした石材。横に6つ並べると1間(約180㌢)になることから名付けられたといわれる。