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概要

20150218-0005-001

10 第1 章 肥後種山石工技術継承講座 経過報告*9 カナテコ(鉄梃)とは、鉄製のてこ。石材を移動し据え付ける際に使用する道具。クで線を引く。間知石の面に沿った角の部分を合あいば端といいますが、普通の間知石の控えの形は合端から尻(裏)にかけ細くなり、四角形の頂点付近が平らになった台形をしています。それが竹部さんの線引きでは、ほぼ直方体。竹部さんは、「文化財に使う石はこのくらい太くなからにゃ」とおっしゃる。 第2回講座のとき、座学の映像で見た美里町の霊台橋修復工事現場の壁石の太さ、そして鹿児島市の西田橋移設復元工事の際の石材も太かった。どちらも師匠が担当された貴重な文化財で、工事の体験から体得された言葉は、今回の指導にも一貫して流れています。 意欲に燃える受講者は、予定では15時までだった実習を1時間延長して欲しいと要望し、第5回講座は16時までとなりました。「来週土曜は割って加工した石材を使って、石垣の土台を組む実習を行う」と、師匠から発表されると、受講者一同から笑みがこぼれ、さらなる意欲が燃え上がったように見えました。 日本の石橋を守る会会員の尾上一哉さんから、「石工の技術養成講座を始めたいのですが…」と打診があり、「竹部師匠がお達者なうちに」と付け加えられましたので、即座に私は同意しましたが、それは間違いでなかったと思っています。 山都町の通潤橋架設時の石工頭は、種山石工の宇市です。その宇市の流れをくむ技の持ち主はただ一人、竹部光春さん。この方が健在なうちに技術継承講座を実現しなければという尾上さんの願いは、このようにして一歩を踏み出しました。日本の石橋を守る会の石橋構築・修復技術者養成事業が、大きな車輪が回るようにゆっくり回り始めました。時間の掛かる基礎石の据え付け <10月2日 同レポート> 雑木・竹林に囲まれた採石場は、前日の雨が上がり、朝から秋の日差し。10月1日の実習は、前回割った石材を石垣風に並べる作業が行われました。 まず重機を使い、石材を置く地面を平坦にならし固め、南北に目印の細い柱を立てました。第1石は面つらが約60㌢四方、控えの長さが約80㌢の石材が選ばれました。ずんどう型で竹部光春師匠が主張される文化財向きの石材。申し分なしです。 近年見かける石垣は、尻しりぼそ細の間知石が主流で、コンクリートブロックも同型。明治中期にセメントが普及するようになってから、この傾向が強まったようです。師匠にとってはこの風潮打破の思いがあるはずです。それは師匠の言葉に、昔風の本物志向が出ることから分かります。ずんどうな石で組んだ石垣や壁石は、年月を経てもしっかりとしています。 第1石はワイヤロープで巻いてクレーンにかけてつり、所定の位置に運び降ろします。石材はカナテコ(鉄梃)*9を使って師匠が指示した位置に少しずつ移動し、安定するよう第1石の下に皿状の石を敷きます。第1石の据え付けだけで30分ほどが経過しました。