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概要

20150218-0005-001

14 第1 章 肥後種山石工技術継承講座 経過報告未ひつじさるやぐら申櫓下の石垣は、見学のおかげで目が肥えたせいか、積み直した箇所が分かるようになっていました。木下さんに確認すると、上部5層を積み直したそうです。 行幸坂を上り、頬ほおあてごもん当御門の前に南北に延びる長い塀を支える石垣が見えてきました。ここも木下さんが仕事をした箇所だそうです。この南北に長い塀を二の丸公園から見ると、左に戌いぬいやぐら亥櫓、右に西大手門、その間に宇うとやぐら土櫓と天守閣が望める、ワイドスクリーン用の絶景です。横一線の石垣上部は築造から相当の年月がたっており、「沈下する箇所が出てきている」と木下さん。 午後は本丸御殿下の石材置き場で石割り実習。受講者は石神山、花岡山、万日山産の安山岩*14に取り組みます。私が算木積みの石垣をスケッチしていると、少しして、石が割れる乾いた音が響いてきました。石造アーチ橋架設実習の始まり 受講者は予定の座学と見学を消化し、開講式の時点ではカリキュラムになかった石造アーチ橋の築造実習に取り組むことになった。実習橋の架設場所は、上益城郡山都町城原の「緑地広場」。山間のくぼ地に周辺から湧き出た清らかな水が小川となり、ひょうたん型の池に流れ込んでいる。その池のくびれた箇所に径けいかん間*154㍍、拱きょうし矢*160.536㍍、橋幅1.8㍍の石橋を架けるのである。<10月25日 同レポート> 10月22日の第9回講座の午前中は「石橋および支保工の設計」と題し、支保工を設計する尾上一哉さんから、山都町の緑地広場に架設予定の石造アーチ橋架設工程の画像シミュレーションを見せてもらいました。平面・側面の完成予想図を相互に見せながら説明がありました。 午後は緑地広場に移動し、まず実習橋を架ける池の底に堆積していた泥や砂利の除去作業。池の底はコンクリートで固められています。上空には雨雲が広がってきました。土砂の除去作業が済むと、細い柱を打ち込んで糸を張っていました。現地で建設コンサルタントの中村秀樹さんに伺うと、「丁ちょうは張り」*16と呼ぶそうです。その作業で実習橋の高さや幅が見えてきました。受講者も手慣れた感じで、各人の動きに無駄がありません。 輪石の基底部には、池の縁にある大きな石が両岸にあるので、それが反はんりょくいし力石*17の役目を十分果たせそうです。次は輪石基底部の基礎石を据える作業が次の工程です。雨が時折強く降る中、竹部光春師匠は*14 山都町の採石場で石割り実習をした際の石は溶結凝灰岩だったが、安山岩はそれより硬いため勝手が違う。*15 径間とは、アーチ基底部の輪石根元(基礎石の上の輪石)の基準点からもう一方の輪石根元の基準点までの距離。スパン(支間)ともいわれる。*16 拱矢とは、要石(アーチクラウン)中央から径間測定のために引いた水平線までの鉛直距離。ライズともいわれる。*16 丁張りは、工事をする前に水糸を使って建造物の正確な位置を出す作業のこと。*17 反力石とは、石造アーチ橋の両岸のアーチ基底部に働く水平力に抵抗するため、岩盤のない平地に石造アーチ橋を造る工夫として土の中に築いた人工の岩盤のこと。