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概要

20150218-0005-001

16 第1 章 肥後種山石工技術継承講座 経過報告 一方、水を抜いた池での橋脚北岸部の基礎加工作業は、2㌧はあると思われる巨石のすぐ横に2個の大石を密着して並べます。その石は60度の傾斜角で削られていきます。この傾斜面に北岸側の輪石が接するわけです。 石材置き場で輪石の加工をしていた受講者の一人が冗談半分に、「電動のこぎりを持ってきて削ると早かばい」と言うと、師匠は「わしが指導しよって、機械を使って削らせるわけにはいかん」と釘を刺します。さすが、文化財である石橋の修復ができる技術者の養成を目指す師匠だと、私は感心しました。 緑地広場には受講者たちが使うノミやボタの音が響いています。これが伝統的な石工の作業風景なのかもしれません。支保工を設置 11月5日の第11回講座は、木製の支保工の上に輪石を設置する作業。竹部光春師匠が選んだ輪石の配列に適した石材を、両岸に同時に設置しながら作業を進める。支保工の上面には、石材の幅に合わせ受講者が墨打ちした線が引かれているが、実際に石材を置いてみると、その線がそれぞれ平行になっていないことが判明する。もしそのまま作業を続けると、微妙なずれが重なり狂いが生じる。 第11回講座は座学(損傷を受けた石橋)で講師を務めた中村秀樹氏がレポートした。<11 月6 日 中村秀樹氏のレポート> 11 月5 日の作業予定は輪石の設置完了まで。ときどき小雨が降る中、コォーン、コォーン、コッコッ、パーン、パーンと受講者が朝から輪石を削はつる音が、静かな緑地広場に鳴り響いています。竹部光春師匠と世話役の尾上一哉氏が、輪石の配列に適した石材を選ぶと、それを受講者が軽トラックで架設地点に運びます。そして狭い場所が得意なカニクレーンで、その石材を支保工の上に設置します。 しかし、設置した支保工表面の合板に墨打ちした線と丁張りの水糸が合致しません。長方形に組み立てたはずの支保工の基礎枠がわずかに平行四辺形になっていることが判明。そこで尾上氏が支保工を一度解体して調整し、組み立てなおすことを受講者に告げます。橋の4 辺と対角線長を正確に測定し、水糸から水面までの高さを確認して水準となる高さを調整して出直しです。 石橋の構築は石材を全て手作業で仕上げ、現地で組み立てます。石材の加工も重要ですが、輪石を輪石を加工する受講者*18 墨壺は、建設現場で材木などに基準となる直線を引くために使用される道具。壺の部分に墨を含んだ綿が入っており、糸車に巻き取られていた糸を張り、糸の先についたピンを材木などに刺し、糸の途中をはじくと材木上に直線が引ける。