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概要

20150218-0005-001

64 第3 章 日本の石橋の現状コンクリートで石橋を改変 石橋保存に至るまでには、さまざまな壁が立ちはだかる。現存または移設復元された石橋もさまざまな経緯をたどっている。石橋の存在を脅かす要因は2つに大別される。1つ目は、洪水による損傷や流失の発生などの自然の脅威。2つ目は、洪水防止のための河川改修や円滑な道路交通のための道路拡幅などに伴い、石橋が撤去されるという人為的な要因である。 洪水により損傷を受けた石橋は、損傷箇所の修理が必要である。もしそのまま放置すれば、洪水のたびに崩壊の危険が高まる。文化財に指定された石橋は、国や自治体の文化財担当部署がそれを管轄しているが、文化財にふさわしい修理*4の実施が課題である。それだけに現状では、文化財指定のない石橋に対する取り扱いの基準はないため、築造時期の工法を無視したコンクリートを使った改変が行われてきた。河川改修や道路拡幅と石橋の現地保存 洪水防止のための河川改修では、「水を流す」という川の性能を高めるため、川幅を広げるなどの工事が行われる。河川流域住民の安全・安心のための取り組みであるが、その際に石橋が撤去されてきた。しかし、場所の特性に合わせた工夫により、石橋が現地に保存されている事例もある。石橋を迂うかい回するよう川の流れを変える河川バイパスを設けて増えた水を分けて流す、川幅を広げずに遊水池やダムを設けて増水した水を一時的に貯め徐々に流す──などの工夫がみられる。*5諫早眼鏡橋長崎県諫早市、1839(天保10)年架橋、2連アーチ、橋長49.25㍍、橋幅5.5㍍。1961年に諫早公園に移設復元椿橋(熊本県下益城郡美里町)石橋本体がコンクリートで巻き固められている。上流(奥)に鉄筋コンクリート製の新橋が架かり、石橋は歩道橋になっている