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概要

20150218-0005-001

68 第3 章 日本の石橋の現状になった。 移設保存が実現した近年の事例では、熊本県山鹿市の平山橋も挙げられる。同橋は平山温泉街に架かる単一アーチ橋で、1861(文久元)年に築造され、その後1914(大正3)年に同型の石造アーチ橋を併設して路面を拡幅する改修が行われていた。 2011年、下流側数軒の住民が川の増水時の浸水被害の危険を訴え、平山橋の撤去を主張した。文化財指定はないが、同橋の保存状態は良好だったため、地域の区長と保存を望む地元団体らが協議を重ねた結果、同橋を解体し、石材を一時、山鹿市立博物館の敷地内に保管し、移設場所を検討することで同意した。その後、山鹿市は2014年8月、解体された平山橋の移設場所を平山温泉街の河川公園と決定し、移設保存に掛かる費用は同市の単独財源で予算化された。移設保存工事の対象は江戸期(1861年)築造部分のみで、完成は15年春の予定である。 これらの事例のように、撤去の際は石橋を適切に解体・復元できる技術者の確保とともに、適切な移設場所の選定と移設にかかる費用の捻出が課題になる。 そうした課題が当面解決できない場合は、移設場所が決まらないまま将来の復元を見込んで石橋を解体し、石材を保管しておくことがある。熊本県では復元を待つ石材が存在している。夕尺橋 熊本県上益城郡山都町の金内川(浦田水路)に架かっていた「夕尺(遊雀)橋」は、橋長4.3㍍、橋幅2.1㍍、径間2.7㍍の石造単一アーチ橋。周辺には水田が広がり、石橋の路面は農道として使われていた。江戸末期に築造されたといわれる同橋は、肥後・熊本と日向・延岡を結ぶ日向往還に架かっていたとされている。 浦田水路の改修工事に伴い2013年12月、同橋の撤去が計画されていることを知った「山都町の石橋を守る会」(浜田浩二会長)は、保存に向けた対策を協議したが、すでに下流から順に工事が進んでおり、水路の計画変更による同橋の現地保存は困難な状況だった。そのため同会は、工事を発注した町の農林振興課に対し、移設保存の要望書を提出した。町は対応を検討し、移設を前提した解体を行い、石材を保管する間に移設場所や移設工事移設保存工事中の平山橋熊本県山鹿市・平山温泉、元の石橋は1861(文久元)年架橋、1914(大正3)年改修。2015年1月から1861年架橋部分のみ移築保存工事に着工(写真は1月31日撮影)夕尺橋熊本県上益城郡山都町、橋長4.3㍍、橋幅2.1㍍、径間2.7㍍。2014年12月解体され石材が保管されている