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概要

20150218-0005-001

78 第4 章 石橋の復活を目指して振動数の把握を行い、車両走行試験(写真3.10)では車の速度を変化させながら橋面上の加速度を計測して振動特性の把握を行った(写真3.11)。また、石橋全体を2次元にモデル化し、車両の載荷試験と同じ条件、載荷方法で鉛直変位について解析を行い、実験値と解析値との比較検討を行った。 図3.8と図3.9は車両の後輪をL/2点に載荷した時と3L/4点に載荷した場合の結果で、実験と解析の変位挙動の値がよく対応していることが分かる。中国では長大な石橋の建設が行われている 日本では道路橋として石橋建設が全く行われなくなったが、中国では現在も、長大な石橋の建設が進んでいた。熊本大学で研究し、博士の学位を取得して中国に帰った王占飛さんからの情報で、私はそのことを知った。九州橋きょうりょう梁・構造工学研究会(KABSE)の研究分科会では石橋の設計法の確立を目指していたので、早速、中華人民共和国(中国)の石橋設計基準書を入手し、王さんに日本語への翻訳を手伝ってもらった。またちょうどこの時期、アーチに関する国際学会が中国の福州市*10で開催されることが分かった。その機会に私は国際学会で研究発表を行い、加えて有志とともに、古い桁橋や近代の長大石橋の現地視察を実現することができた。以下に、中国で視察した主な石橋の様子を示して感想を述べる。 視察は、福州市内の公園の石橋(写真4.1)から始まった。この石橋は中国の典型的形状を有する太鼓橋である。写真4.2は1059年架橋の桁橋として有名な洛陽橋(全長1,188㍍)である。この時代の石橋は、花崗岩で組んだ舟形の橋脚(写真4.3)の上に、幅75㌢で厚さが50㌢、長さが8?10㍍の花崗岩の桁を数枚敷いた桁構造の形式である。写真4.3は同様な形式で2,070㍍の長さを有する安平橋で、架橋は1138年。中国の石橋はこのような長大な桁橋やアーチ橋など多彩な石積み形式で建設されている。最後に近代の長大石橋である写真4.4の金山橋(1972年架橋、スパン99㍍)を視察した。 アーチ基部のリブの幅が1.8㍍もある巨大な石橋が建設されていることに圧倒された。使用されている石材は花崗岩であり、石材同士をすべてモルタル接着している。上路式のアーチ橋の基部の様子や支柱の内部は不明だが、これだけの石橋を設計するとは、本当に素晴らしい技術力である。周辺の山々からは花崗岩が産出されているが、こうした豊富な石材、および、設計基準書が長大石橋を生み出す要因であるとつくづく感じた。 中国の石橋に関する専門書によれば、西暦605年の安済橋(37㍍)から始まった石橋建設は、スパン120㍍の鳥巣大橋(1990年架橋)まで、数多くのアーチ橋や橋長が2,000㍍を超す桁橋まである。中国の石材文化が現在まで継承され、かつ新しい石橋の技術が開発されてきた表れかと思える。日本で石橋文化の良さが現在まで十分継承されてこなかった背景は、橋梁建設技術の進歩と使用材料の開発が進み、安価で長大な鋼橋や鉄筋コンクリート橋の建設が容易になったこと、古いものを廃棄して新しい社会基盤を建設することで経済発展を進めることが主流になったことが要因と思われる。石橋は長大スパン化に対*10 福州市は、福建省の省都。上海市の南、台湾に近い中国沿海部に位置する。